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ゼロカーボン・スチールの実現に向けて

ゼロカーボン・スチールとは?

二酸化炭素の排出量削減は、日本だけでなく世界中の課題となっている。
そのために化石燃料の使用削減を始めとして、多岐にわたる取り組みが政府や企業主導で行われている。
その取り組みはまさにあらゆる業界に及んでいるが、特に工業分野においては製造工程において多量の二酸化炭素を排出する傾向にある。
そのためさまざまな取り組みがなされるようになっており、その一つとしてゼロカーボン・スチールというものがある。

これは、工業製品において非常に重要な鉄製品を作る際に、二酸化炭素を排出しないで済む製造方法を採るということだ。
一般的に鉄は鉄鉱石を精錬してできる。
できあがった鉄は、さらにさまざま部品に加工するために熱を加えられ、曲げたり伸ばしたりする。
大量の熱が必要となるため、重油やガス、石炭などの燃料を大量に使うことになり、二酸化炭素の排出量も当然多くなる。
そのため、鉄の生産・加工において二酸化炭素の排出量をゼロにできれば、非常に大きな効果を生み出すわけだ。

とはいえ、既存の燃料に代わる高温の熱を与えられる燃料というのはあまり存在しない。
また、あったとしてもコストが高くなってしまうため、実用的ではないのが現状だ。
そこで、CCSなどの策を使って実質的に二酸化炭素の排出量を相殺する取り組みがなされている。

CCSとは、製造工程で発生する二酸化炭素を回収し地中深く溜めるというものである。
具体的には、製造プロセスで出た二酸化炭素を他の気体とは分離して純粋な二酸化炭素とする。
そして、そのCO2を地中深くに注入することによって、地上に二酸化炭素が放出されないようにするのだ。

実現に向けて進められる技術開発

こうした、いわゆる実質的なCO2排出ゼロだけでなく、真の意味で二酸化炭素の排出そのものをなくすための取り組みも進められている。
しかし、上記のように現状では石油や石炭に取って代わる燃料の選択肢が少ないため、新たな燃料確保のための技術開発が必要となる。
今最も有力視され実用化に向けて動いているのが、水素燃料の活用である。
水素は燃焼させると水しか発生しないので、二酸化炭素の排出削減に大きな役割を演じることになる。

既存の高炉を使った鉄鉱石還元のやり方から、水素還元による製鉄技術を確立するため、日夜技術者は知恵を絞り実用化するための実験を繰り返している。
そのためには、まず大量の水素を安定供給する仕組みとルートを作らなくてはならない。
その上で、製鉄は単に熱をかければ良いというわけではないので、水素を使った効率的な新しい製鉄法を編み出す必要がある。
これはまさに革新的な製鉄法の転換となりえる事業であるため、製鉄業界では非常に注目されている分野なのである。